Aikidoが公開する導入事例53社を横断し、顧客が導入前に何に悩んでいたかを集計した。見えてきたのは「脆弱性が見つからない」ではなく「見つかっても人が処理しきれない」という共通のボトルネックだ。
Aikidoが公開している導入事例、53社分を読んだ。
事例から、今、顧客が何に悩んでいるのかを考察してみる。一部のデータであることは理解している。しかし、ここには日頃目にする顧客の課題が浮き彫りになるように思う。
以下の表は、全事例から顧客の課題をまとめたものだ。
| 課題 | 言及 | 現場の言葉 |
|---|---|---|
| 誤検知とノイズで、検出結果を捌けない | 14社 | 毎日40〜50件を、人が手で選り分けていた |
| 少人数が、過大な資産量を抱えている | 9社 | 20名の技術チームが、バックエンドからセキュリティ、ERPまで兼務している |
| 機能ごとに別のツールで管理し、結果が統合されない | 8社 | 個々には良いツールだった。合わさると混乱だった |
| 見つかっても、直るまで届かない | 8社 | 長いレポートは要らない。2行で重大度を教えてくれれば動く |
| 子会社・地域ごとにやり方が違い、全体を同じ基準で見られない | 6社 | 地域ごとに独自のツール選択で、カバレッジがばらばらだった |
| 開発者に使われず、迂回される | 6社 | 迂回されないフィードバックループが必要だった |
| 導入・展開そのものが重い | 5社 | 45分で150名以上の開発者をオンボードできた |
| 攻撃検証の質と頻度が足りない | 5社 | チェックリスト型でなく、実際の攻撃者のように探索する |
| コンプライアンスが、四半期ごとの点の対応になる | 4社 | 四半期ごとの駆け込みが、常時のセキュリティに変わった |
(1社が複数に該当するため、延べ数)
ここから見えてくる、現在の課題を紐解きたい。
この53社から言えるのは、ソフトウェア資産が増えたこと、開発の速度が上がったこと、そして検出結果を処理しきれなくなったこと、この三つだ。私は、その背景にはAIを活用した攻撃の増加と、それに追いつかない運用負荷の拡大があると考えている。
上位4つは、別々の課題ではない。 検出件数が増えれば、人が確認する件数も増える(14社)。資産が増えれば、一人が抱える範囲が広がる(9社)。抱えきれないので、機能ごとに道具を足す。足した道具は、結果を別々に返す(8社)。そうして手元に届いた頃には、直すところまで力が残っていない(8社)。一本の連鎖が、組織の場所ごとに違う顔で現れているだけだ。
次の2つは、道具の性能では解けない。 子会社と地域の壁(6社)は横方向の分断で、開発者に迂回されること(6社)は縦方向の分断だ。どれだけ精度の高い検出をしても、使う人に届かなければ数字は動かない。ここから先は組織の問題になる。
7番目が課題として現れていること自体が、事態を表している。 導入や展開のしやすさは、本来なら前提条件であって、課題ではない。それが選定の決め手として繰り返し語られるのは、待てないほど切迫しているからだ。45分、15分という数字が売り文句として成立すること自体が、我慢の限界がどこにあったかを示している。
そして、下の2つが少ないことに意味がある。 攻撃検証(5社)は「守れているかを確かめる」課題で、コンプライアンス(4社)は「守れていたと証明する」課題だ。どちらも、検出と修正が回っていて初めて出てくる。この2つが少数派だということは、多くの組織がまだ入口で足踏みしていて、確認や証明の段階まで到達していないということになる。9つの課題の並びは、そのまま成熟度の階段になっている。
もう一つ、移行元の内訳が同じことを裏づけている。最多はOSSツールの寄せ集めで12社。特定の商用ツールからの乗り換えではない。自前で組んで回していたものが、量に耐えられなくなった会社が最大の母集団だった。
この53社に共通していたのは、「脆弱性が見つからない」ではなかった。
見つかっても、人が処理しきれない。
そこが、今のアプリケーションセキュリティの本当のボトルネックなのだ。
セキュリティの問題というより、「回る仕組み」をどう作るかという問題になってきている。
Aikido Community Japan
公開日: 2026/7/27
最終更新: 2026/7/26
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