2026年5月12日にAikido Blogで公開された「Opengrep SAST After One Year」を、日本の読者向けに解説。10社のセキュリティベンダーがSemgrepをフォークしてOpengrepを立ち上げた背景、1年で174万DL/25-74%高速化を達成した成果、そしてAI時代になぜ"答えがブレない"決定論的SASTの価値が上がるのかを、技術用語を避けてビジネス目線で読み解きます。
2026年5月12日、Aikido Blog で興味深い記事が公開されました。
📖 元記事: Opengrep SAST After One Year: Faster, Deterministic Static Analysis
(Opengrep の1年:より高速で、決定論的な静的解析)
業界で広く使われてきたOSS「Semgrep」から分岐して生まれた Opengrep がちょうど1周年を迎え、この1年間の成果と、これからのSAST市場についての考察がまとめられています。
本記事では、この Aikido Blog 記事を 日本の読者向けにわかりやすく解説します。「経営・予算決定者」「セキュリティチームのリーダー」が押さえておくべきポイントに絞り、技術用語をできるだけ避けて整理しました。
忙しい方のために、最初に結論を:
以下、それぞれを詳しく見ていきます。
まず、記事を読むうえで欠かせない3つのキーワードを押さえましょう。
ソースコードを「実行せずに」中身を読んで、セキュリティの問題点を見つけるツールです。
たとえ話で言えば、料理で材料を見ただけで「これは食中毒の危険がある」と指摘してくれる検査員のような存在。アプリをリリースする前に脆弱性を潰すため、多くの開発現場で使われています。
SAST分野で世界的に有名な、OSS(オープンソース)のスキャンエンジンです。「こういうパターンのコードは危険」というルールを書くだけで、合致する箇所を瞬時に見つけてくれます。多くの市販セキュリティ製品の裏側で動いている、いわば業界の共通基盤になっていました。
2025年5月、セキュリティ会社10社が結託して、Semgrepから分岐(フォーク) して新しく立ち上げたOSSプロジェクトです。名前は似ていますが、目的も運営体制も別物。1年経った今、独自路線で着実に成長しています。
元記事で最初に語られるのは「なぜフォークしたのか」です。ライバル関係にあるはずの10社が、わざわざ手を組んでまで分岐した背景には、業界で 「Open Core(オープンコア)の罠」 と呼ばれる構造問題があります。
たとえ話で説明するとこうです。
あるOSSが無料で広く使われ、業界の共通基盤となりました。 ところがある日、開発元の会社が「これからは便利な機能の半分は、有料版でしか使えなくします」と発表。 既に依存していたユーザーは、「諦めるか、お金を払うか」の選択を迫られます。
Semgrepでも同じことが起きていました。元記事によれば、関数をまたいで"危険なデータ"の流れを追跡する高度な解析機能が、いつの間にか有料版「Semgrep Pro」限定になっていたのです。
利用企業にとって、これは大きな問題です:
💡 コラム:同じ構造の問題は ElasticSearch、Redis、MongoDB などでも起きてきました。「OSSロックイン」は、いまやビジネス界の重要な関心事です。
元記事には、フォークに参加した10社の名前が並んでいます:
Aikido Security、Arnica、Amplify、Endor Labs、Jit、Kodem、Legit、Mobb、Orca Security、Phoenix Security
本来は競合関係にある会社同士です。それでも結託したのは、「特定1社に基盤を握られるリスク」より「共通基盤として守る価値」のほうが大きかったから、と元記事は伝えています。
元記事では、Opengrep 1周年の主な成果が以下のように報告されています。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| スキャン速度 | 25-74% 高速化 |
| バイナリのダウンロード数 | 174万件 |
| GitHub Star | 2,000以上 |
| 本番採用しているセキュリティ会社 | 10社以上 |
| 1年間のリリース回数 | 43回 |
| 外部からの貢献者 | 17名 |
数字以上に重要なのは、元記事が強調する 「かつてSemgrep Pro(有料版)でしか使えなかった高度な解析機能が、無料で誰でも使えるようになった」 という点です。中小企業や、予算が限られる組織にとって、これは特に大きな意味を持ちます。
また、運営は 中立的なメンテナチーム3名 が担当し、GitHub上で透明にプロジェクトが進められています。外部から17名の貢献者が集まっていることからも、特定1社に支配されない運営が実現しつつあると元記事は伝えています。
ここが、元記事で最も力を入れて語られているパートです。
2025〜2026年、生成AIブームと共に「AIスキャナ」が次々登場しました。LLM(大規模言語モデル)がコードを読んで脆弱性を見つけてくれる、画期的な製品群です。 しかし、元記事は 「AIには構造的な弱点がある」 と指摘します。
元記事の表現を借りるなら、AIスキャナは 「確率的(probabilistic)」 な仕組みで動きます。 つまり、同じコードを2回スキャンしても、毎回まったく同じ結果が返るとは限らないのです。
これは、セキュリティ検査の現場では困った問題を生みます:
元記事には、独立系セキュリティアナリスト James Berthoty 氏(Latio.tech 運営) が公開した実測値が引用されています。
| 検査方式 | 所要時間 | AIトークン消費 |
|---|---|---|
| AIスキャナ | 17分 | 15万5,000トークン |
| Opengrep(決定論的) | 30秒 | 0(API呼び出しなし) |
検出対象は同じ脆弱性です。CI/CDで毎日数百〜数千回スキャンを回す現場では、このコスト差は無視できない、というのが元記事の主張です。
ではAIスキャナは使えないのか? 元記事はそうは言っていません。 示されている答えは 「二層構造(layered approach)」 です。
┌─────────────────────────────────┐
│ 上層:AIスキャナ │
│ ・誤検知の抑制 │
│ ・優先度付け、トリアージ │
│ ・新規パターンの探索的検出 │
├─────────────────────────────────┤
│ 下層:決定論的SAST(例: Opengrep) │
│ ・既知パターンを高速・確実に検出│
│ ・CI/CDの自動ゲートとして機能 │
│ ・毎回同じ結果(再現性)を担保 │
└─────────────────────────────────┘
つまり 「AIか従来型か」の二択ではなく、「役割分担」 が現実解、というのが元記事のメッセージです。 むしろAIが普及するからこそ、その土台となる "答えがブレないスキャン"の価値が上がる という見方が、元記事の中心にあります。
元記事の内容を踏まえて、日本の現場で実際にSAST選定をする際のチェックリストを整理しておきます(これは本記事独自のまとめです):
最後に、Aikido Blog の元記事から読み取れる本質をおさらいします。
技術ニュースを単に追うだけではなく、自社のセキュリティ戦略や予算計画を見直すきっかけとして、Opengrepの動きを捉えてみる価値は大きいはずです。
本記事は Aikido Blog の以下の記事を、日本の読者向けに解説したものです。 英語で原文を読みたい方は、ぜひ元記事もご覧ください。
🔗 元記事(英語): Opengrep SAST After One Year: Faster, Deterministic Static Analysis
Aikido Community Japan
公開日: 2026/5/13
最終更新: 2026/5/13
セキュリティの最新情報をお届けします。